毛髪に関する研究成果、2年連続最多の3題発表
~第2回日本化粧品技術者会 学術大会~
タカラベルモント株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役会長兼社長:吉川 秀隆)の化粧品研究開発部は、2024年11月18日(月)~20日(水)に神戸国際会議場(兵庫県神戸市)で開催された「第2回日本化粧品技術者会 学術大会」において、当社としては最多の3題(口頭1題、ポスターセッション2題)の研究成果を発表しました。
また、本大会前身の「SCCJ研究討論会」も含めた過去11年間※において、2年連続で毛髪に関する研究内容が同一企業から同時に3題選出されたことはなく、当社が初となります。
※期間:SCCJ研究討論会第70回2012年7月~第89回2022年12月、日本化粧品技術者会学術大会第1回2023年12月

【発表内容】 *当日発表者
■ 免疫組織科学と類似度比較を用いることによる毛髪中のケラチンプロファイリング
萬成 哲也*,武鹿 直樹
■ 毛髪における超硫黄分子の局在および硫黄導入による影響
河内 佑己*,萬成 哲也,尾澤 佑輔,渕上 幾太郎
■ ダメージ毛を内部から効果的に補修するケア方法を求めて
~FS-SR101染色パターン変化を指標とした毛髪内部ケアの検討~
荒井 佑香*,萬成 哲也,原田 佳祐
≪口頭発表≫
■免疫組織科学と類似度比較を用いることによる毛髪中のケラチンプロファイリング
【要点】
クセ毛や直毛などの髪質になぜ違いが生じるのか。その実態を解明すべく、毛髪の重要な構成成分であるケラチンの分布に注目しました。ケラチンには複数の種類が存在するため、まずは自社独自の毛髪イメージング技術に特定のタンパクを可視化できる免疫組織科学を応用し、各ケラチンがどのように分布しているのかを調べました(図1)。その結果、コルテックスに存在する12種類のケラチンについての分布パターンを解明することができ、 さらにはその中でも3種類のケラチンがクセ毛でより左右分布に大きな偏りを生じることを発見しました(図2)。


【コメント】
萬成 哲也(マンナリ テツヤ)
化粧品研究開発部 基礎研究センター
今後は、さらに毛髪形状に対する各種ケラチンの影響を調べることで、クセ毛や直毛の悩みに発生要因から働きかけられる製品や技術開発への可能性を探っていくつもりです。
また、本研究で用いた「自社独自の毛髪イメージング技術×解析技術」のアプローチを、ケラチン以外のターゲットにも展開していくことで、毛髪における様々な事象の本質解明につなげていきたいと考えています。

≪ポスターセッション≫
■毛髪における超硫黄分子の局在および硫黄導入による影響
【要点】
毛髪において、超硫黄分子が存在することが今年報告されたました。そこで本研究では、毛髪内部における超硫黄分子の存在状態をより詳細に調査し、さらなる実態の解明を試みました。その結果、自社独自の毛髪染色技術により、コルテックス(Co)ではオルト様Coと分布パターンが類似することが分かり(図3)、またメデュラでは、ホワイトメデュラよりもブラックメデュラに超硫黄分子が比較的豊富に存在していることを発見しました(図4)。


【コメント】
河内 佑己(カワチ ユウキ)
化粧品研究開発部 第二研究所
毛髪科学を語るうえで欠かせないジスルフィド結合。近年、この中には複数の硫黄原子が結合したポリスルフィド結合(超硫黄分子)が存在していることが発見されました。
超硫黄分子は、毛髪の本質解明に加え、従来とは全く異なるアプローチで髪を美しく、健やかにする技術をもたらす可能性を秘めています。
日本が牽引する超硫黄分子研究と、日本で独自に進化した毛髪におけるジスルフィド結合のノウハウを掛け合わせ、世界が驚く発明をしていきます。

≪ポスターセッション≫
■ダメージ毛を内部から効果的に補修するケア方法を求めて
~FS-SR101染色パターン変化を指標とした毛髪内部ケアの検討~
【要点】
近年、ヘアスタイルの多様化により多くの人が毛髪の内部にまで及ぶダメージを抱えています。今回の研究ではフルオレセインナトリウム(FS)とスルホローダミン101(SR)による示差染色(FS-SR101染色)を活用し、100を超えるケア成分およびその組み合わせから、ダメージ毛のコルテックス領域への反応性が高い組成物を発見しました。また、MALDI法による質量分析イメージングを行うことで、組成物中のどの成分が働きかけているのかを確認しました。


【コメント】
荒井 佑香(アライ ユカ)
化粧品研究開発部 第一研究所
今回の研究では、特定のケア成分を一定の比率で組み合わせることで、非常に効果的な毛髪の内部補修ができる可能性を見出しました。
この研究を化粧品に応用することで、従来の化粧品よりもさらに進化を遂げたヘアケア製品の開発が可能になると期待しています。
より良い化粧品を皆様の手に届けられるよう、今後も新たな可能性を追求し続けます。

<参考>
SCCJ(日本化粧品技術者会)について
1947年、化粧品および関連の科学技術の進歩に貢献すると共に、会員相互の啓発と交流を図るための活動を行い、化粧品産業の発展に寄与することを目的として立ち上がった伝統ある学術団体。
「日本化粧品技術者会 学術大会」の前身「SCCJ研究討論会」は、1976年から実施されてきたが、2023年からは、更なる技術者のレベルアップと技術のグローバルリーダーを目指す次世代の発表の場として本学術大会が新設され、今回で2回目となる。また、グローバル化の一環としてSCCJ は、国際化粧品技術者会連盟(IFSCC:参加80か国、約16,000 名)へ1962年より正式加盟されている。
*日本化粧品技術者会ホームページより一部引用